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期待大!スバルのストロングハイブリッドの仕組みはこうなっている。クロストレックe-BOXER(ストロング)は燃費2割向上!

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SUBARUクロストレックe-BOXER(ストロングハイブリッド)ボディサイズは現行e-BOXERと同じ。
水平対向エンジンをモチーフにした新しいe-BOXER円プレ無

AWDアリで作り上げられたBOXER+トヨタ式ハイブリッドシステム

スバルは新たな主力パワーユニットとしてストロングハイブリッドシステムを開発し、まずはコンパクトクロスオーバーのクロストレックに追加設定する。スバルはこの新しいハイブリッドシステムを「e-BOXER(ストロングハイブリッド)」と呼ぶ。従来から設定のあるマイルドハイブリッドのe-BOXERも継続生産され、クロストレックのラインアップに残る。つまり、スバルのハイブリッドはマイルドハイブリッドのe-BOXERと、ストロングハイブリッドのe-BOXER(ストロングハイブリッド)の2本立てとなる。

スバルe-BOXER(ストロングハイブリッド)の図解写真(全18枚)

https://motor-fan.jp/mf/article/274356/

世の中のハイブリッドシステムはおおむね3タイプに分類できる。ひとつはマイルドハイブリッド版e-BOXERが採用している、エンジンの出力にモーターの出力を加えるパラレル式。ふたつめはエンジンを発電機として使用し、モーターで車輪を駆動するシリーズ式。日産のe-POWERがこの方式だ。3つめは発電用と駆動用のふたつのモーターを備え、状況に応じてエンジンとモーターを動力源として使い分けるシリーズ・パラレル式である。e-BOXER(ストロングハイブリッド)はこの方式だ。

左が今回発表されたe-BOXER(ストロングハイブリッド)、右が現行e-BOXERだ。
ストロングは「モーターがメイン、モーターが苦手な領域をエンジンがカバー」
マイルドハイブリッドは「エンジンがメイン、モーターはアシスト」である。
駆動用モーター性能ストロングHEV現行e-BOXER(マイルドHEV)
最高出力88kW(119.6ps)10kW(13.6ps)
最大トルク270Nm65Nm

シリーズ・パラレル式を選んだ理由をスバルは、「しっかり加速し、しっかり登坂できるスバル本来の良さを損なわず、環境性能を引き上げることができるから」と説明した。トランスアクスルは縦置き。マイルドハイブリッド版のe-BOXERはチェーン式CVTに最高出力10kW、最大トルク65Nmの小出力モーターを組み合わせた構成である。

いっぽう、e-BOXER(ストロングハイブリッド)は発電用モーターと駆動用モーター、それにエンジンの動力を発電用モーターと駆動用モーターに分配する動力分割機構を備えている。ホンダのe:HEVもシリーズ・パラレル式に分類できるが、シリーズでの走行が主体で、エンジンの動力のみで走行したほうが高効率な状況でのみクラッチをつないでエンジン直結となる。

e-BOXER(ストロングハイブリッド)のパワーユニット
Screenshot

動力分割機構を備えた構成である点で、スバルのe-BOXER(ストロングハイブリッド)はトヨタのハイブリッドシステムと同種だ。つまり、構造上、エンジンを切り離すことはできない。横置きで構成するトヨタのハイブリッドシステムを縦置きに組み替えたのが、スバルのe-BOXER(ストロングハイブリッド)と見ることができる。

このシステムを特徴づけているのは、AWD機構を内蔵していることだ。スバルのこだわりである。せっかく新規にユニットを開発するならAWD性能も進化させたいと考え、現行の油圧式に対し新たに電磁式の電子制御カップリングユニットを採用した。前後のトルク伝達を制御するメインクラッチ(多板)の押し付け力を制御するボールカムの動きを制御する機構を油圧から電磁式に変えた。これにより、「高応答・高精度で制御できるようになった」と説明する。

トランスミッションの名称は「リニアトロニック」だが、チェーン式CVTではない。ここに発電用モーター(MG1)、駆動用モーター(MG2)、AWDの電子制御カップリングなどが収まる。
①トルクリミッターダンパー
②プライマリーリダクションギヤ
③発電用モーター(MG1)
④動力分割機構
⑤セカンダリーリダクションギヤ
⑥駆動用モーター(MG2)
⑦電子制御カップリング(電磁式)
⑧プロペラシャフトへ
⑨リダクションギヤ
⑩フロントデフ
⑪トランスファーギヤ

駆動用モーターの最大トルクが270Nmである理由

リヤにモーターを搭載することでAWDを成立させるケースがあるなかで、プロペラシャフトで機械的に後輪に駆動力を配分する方式を選択したのも、スバルのこだわり。「スリップする前から適切にリヤに駆動力を配分するので、雪道など路面状況が刻々と変わるようなシーンでもスムーズに安定して走れる」点を、スバルの伝統である機械式AWDのメリットに挙げる。

駆動用モーターの最高出力は88kW、最大トルクは270Nmである。マイルドハイブリッド版e-BOXERの比ではなく、力強いアシストが期待できることが数字から伝わってくる。裏話になるが、e-BOXER(ストロングハイブリッド)はトヨタのハイブリッドシステムと同様、リバースの切り替え機構を持っていない。では、どうやって後退するかというと、駆動用モーターを逆回転させる。エンジンは正転しかしないからエンジンの出力は駆動に寄与せず、駆動用モーター単独の力で後退しなければならない。

スバルには他社より厳しいと自負するリバースでの登坂試験がある。モーター単独の力で厳しい登坂試験をクリアするために必要な最大トルクが270Nmだったのだそう。とってもスバルらしいエピソードに思えてしまう。

エンジン
形式:水平対向4気筒DOHC+モーター
型式:FB25
排気量:2498cc
ボア×ストローク:94.0mm×90.0mm
圧縮比:11.9
最高出力:160ps(118kW)/5600pm
最大トルク:209Nm/4000-4400rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:63L
駆動用モーター:MC2型交流同期モーター
最高出力:88kW(119.6ps)
最大トルク:270Nm

マイルドハイブリッド版e-BOXERのエンジンは2.0Lだが、e-BOXER(ストロングハイブリッド)は2.5Lの排気量を選択した。当然、水平対向4気筒である。排気量増は動力性能と燃費のためだ。2.0Lでも必要な出力は出せるが、高回転まで回す必要があり、うるさくなってしまうし、結果的に燃費が悪くなってしまう。低回転で必要な出力を得るためもあり、排気量増を選んだ。ミラーサイクル(吸気バルブ遅閉じによる高膨張比サイクル)を適用するなど、ハイブリッド専用のエンジンに仕立てあげている。

容量1.1kWhのリチウムイオンバッテリーは荷室フロア下に搭載する。バッテリーの直流電流をモーター駆動のための交流電流に変換するインバーターや高電圧を12Vに変換するDC-DCコンバーターなどを一体化したパワーコントロールユニット(PCU)は、エンジンルームに配置した。エンジンの上に強引に載せる格好になったので、吸気マニフォールドが割を食って(もちろん、性能は担保している)2階建て構造になっている。

e-BOXER(ストロングハイブリッド)もスバルがこだわるシンメトリカル(左右対称)なレイアウトとなっている。
丸で囲んで部分が駆動用バッテリー。容量は1.1kWhだ。
駆動用バッテリーの構造
ストロングHEV現行e-BOXER(マイルドHEV)
バッテリー種類リチウムイオン電池リチウムイオン電池
公称電圧約260V118V
総電力量1.1kWh0.6kWh
燃料タンク容量63L48L
WLTCモード燃費未発表(現行e-BOXEより約2割向上)15.8km/L

PCUをエンジンルームに収めることができたので(バッテリーもPCUも車両中心線に対して対象になるように搭載しているのは、左右の重量バランスを考えてのこと。これもスバルのこだわりである)、後席下の燃料タンクのためのスペースを充分確保することができた。そのスペースを活かし、燃料タンク容量はマイルドハイブリッド版e-BOXERの48Lに対し、63Lへと増量した。発売前なので、e-BOXER(ストロングハイブリッド)搭載車のWLTCモード燃費は発表されていないが、マイルドハイブリッド版e-BOXER車の15.8km/Lに対し約2割向上しているという。単純計算で約19km/Lということになる。燃費向上分と燃料タンクの容量増により、クロストレックのe-BOXER(ストロングハイブリッド)搭載車は1000kmを超える航続距離に達するという。ロングドライブ時にしても、普段使いにしても、給油のインターバルが長くなる。


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